11月5日(土)、北海道札幌市・北ガスアリーナ札幌46で「第1回全国特別支援学校フットサル大会」が開催されました。
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関西地区代表として本大会に出場した大阪府なにわ高等支援学校 戸西寿和先生、大屋煎くんにそれぞれお話をお伺いしました。
9番 大屋煎(おおや ぜん)くん 高校3年生
「小学生の頃、お兄ちゃんの影響で始めたんですけど、体験の3日目で友達と喧嘩して辞めちゃいました。高校生になって5月にサッカー部に入部したけど1ヵ月ももたずにまた辞めてしまって…(笑)10月くらいからまた始めて今に至ります。今は楽しいです!」
-初めての全国大会の感想を教えてください。
フットサルの練習は今年から始めたばかりだったので、まず関西予選を勝ち上がることが難しかったです。
-普段の練習について教えてください。
もともとはサッカーだけ練習していました。雨の日に室内サッカーという感覚でやっていたこともあり、「ピヴォ」というポジションの呼び方も知らなかったし、ファーストタッチが足裏とかも知りませんでした(笑)フットサルを理解するのにすごく時間がかかりました。とにかく難しかったです。
-サッカーとフットサルどちらも楽しいですか?
サッカーではセンターバックをしていて、自分がどういうプレーや動きをしたら良いかがわかっているけど、フットサルは受けたボールを前に蹴るか、落とすかが結構重要だと思っていて、正直わからないなりに頑張ってやっている感じです。でも、両方とも楽しいです。
-ここまでで良かったと思うところを教えてください。
予選2試合で4点取ることができたので、このあとの試合でも1点か2点かできれば3点取りたいです。
-試合の中で意識している声掛けはありますか?
サッカーではきつい言葉を言ってしまって怒られたりしています…(笑)なので、仲間には気持ちが盛り上がるような声掛けを意識して指揮を高めて、相手を心理的に追い込むような試合運びになるように意識しています。あとは、ミスを解決するような指示が飛んでいると思います。
-今後について教えてください。
サッカーを続けようとは思っていないです。
まだ何かしたいことがあるわけでもないので、働きながら何か見つかればいいなと思っています!
-この大会の意気込みをお願いします。
優勝することしか考えていません。あとは得点をたくさん取ること!
監督 戸西寿和先生
-この度は、第1回大会優勝、おめでとうございます。素晴らしい強さでしたね。(大会終了後インタビュー)
ありがとうございます。結果として優勝することができましたが、どの試合も大変でした。
-私が一番素晴らしいと感じたのは、選手達の立ち振る舞いや発言です。とても堂々としていて自信に満ち溢れている。何がそうさせていると思いますか?
そう見えましたか、ありがとうございます。練習のなかで少しずつ生徒達が自信を付けていっているのは私自身もわかっていましたが、全国大会という舞台で「やれる、いけるぞ」という気持ちを彼ら自身が持つことができ、周囲からも前向きな姿勢に見ていただけたのだと思います。
-自負心が芽生えたのですね。指導をしていく上で、心掛けていることはありますか?
一番大切にしているのは、生徒自身がサッカー、また、フットサルを楽しんでくれるということです。しかし楽しさだけではなく、強さや結果も出していきたいという希望が生徒達からあがっていたので、練習に取り組むことに対するしんどさと楽しさのバランスを、毎日子供達の様子を見ながら考えています。
-子供達が「もっと」「勝ちに行きたい」と望んだ、ということなのですね。
はい。毎年新チームになった時に「どこを目指す?」と本人達に投げ掛けています。一人ずつが「こうなりたい、こうしたい」という目標を話した上で「では、チームの目標は?」というのを3年生中心に、本人達で決めています。そこからのフィードバックで「全国大会でいい成績を収めたい」という目標を定めて練習を重ねてきました。
-自分達で定めたゴールに向かっていったのですね。
フットサルは、サッカーとスピードや空間が違うので、それが楽しいと感じる子もいれば、特性の方が勝ってしまって難しいという子もいます。ですが「今やっていることはサッカーにも活きるよ」「ここでできればサッカーでのプレーに余裕が出るよ」という話をして、これをきっかけにフットサルへの興味も高まりました。最初はみんなその点は半信半疑だったと思うのですが…(笑)海外のサッカー選手の動画を見てる子は「今の動きはフットサルのピヴォ当てに似てる」という風に繋げてくれるようになりました。
-新しい視点が増えて、今後のスポーツの選択肢が増えたかもしれませんね。子供達の将来に向けたお話を伺います。今、理解のある先生方に支えられて学びを深めている彼らも、時期が来れば卒業を迎え社会に飛び立ちます。新社会人を受け入れる側、つまり私達に求めたいこと、多様性を活かすために伝えたいことがあれば教えてください。
本校に関していえば企業就労を目指す学校ですので、受け入れ企業の皆様には生徒ひとりひとりの個性や特徴を理解して雇用していただき、できるだけ長く働くことができる環境づくりやサポートも年々増えてきていると感じます。しかし、残念ながら離職というケースも少なくありません。
-離職の理由はどのようなものが多いのでしょうか?
やはり多いのは人間関係、会社内でコミュニケーションがうまく取れなかったというのが多いです。日々の業務のなかで、個々をサポートする難しさがあるのかもしれません。しかし、その体制や理解がさらに広がってくれれば、彼らの自立もしやすくなるのではないかと思います。
-今の時代、多様性に対してNOを唱える人はほとんどいないと思いますが、多様であることの必要性を理屈ではわかっているけど、それを利活用することへのギャップがあることも一因かと思います。そのギャップを埋めていくためにはどうしたらよいと思いますか?
例えば、学校に来てもらって普段の彼らの様子を見てもらうこともひとつですし、学校側も企業側に出向いて行くなどお互いの協力体制をさらに深めていくことで、企業側が抱える困りごとに対応できるかもしれません。そういった体制があれば私達も入っていきやすいです。
-なるほど、学校と企業の連携体制ですね。彼らの得意なこと、今回のようにサッカーやフットサルが得意だということを会社内のレクリエーションで知ってもらえる機会があったらいいですね!一躍、時の人に!
そうですね。日本知的障がい者サッカーの日本代表がありますし、企業側にそういった存在を知っていただくことも、障がいに対する理解のきっかけになりますね。
-フットサル界でダイバシティを促進していくために、今ある課題はなにかを当事者からお聞きすることが最初のステップだと思っています。「やりたいけれどできない」「はじかれてしまう」その理由はどこにあるのかを、みんなで考えて解決策を見つけていけたらと思います。
各地のサッカー連盟でも様々なダイバーシティの取り組みや交流が行われています。私の携わっている大阪でも、もっと増やしていけたらいいなと思います。
-どのような交流がなされていますか?また効果はいかがですか?
今回の大会に出場するにあたり、私が所属している社会人チームのアンダーカテゴリーと練習試合をしましたが、障がいの有る無しは全く関係なく、楽しみながら勝つという姿が見れましたし、互いに「またやろう、やりたい」という声が挙がりました。こういった機会を今後も重ねていけば理解も深まっていくと思います。
-環境づくりと、機会を増やすこと。そしてせっかくの情報の発信も必要ですね。
そうですね、まだまだ情報が少ないので、少しでもその一翼を担えたらと今年からTwitterを始めました。SNSは疎くて発信の仕方に不慣れな部分もありますが、少しずつ広がっていくのを実感しています。
-今日はありがとうございました。ぜひ今後とも様々な情報を教えてください!
こちらこそありがとうございました!
監督のインタビューを終えて(理事・ダイバーシティ担当 寺田美穂子)
生徒達はみな気持ちの良い好青年で、堂々としていてコミュニケーション能力が高いと感じました。その一方で離職率のお話では、相互理解をもっと深めていく必要性を感じます。各地で様々な場づくりがなされており、そういった事例の共有や相互の連携が益々広がることが求められています。
生徒インタビュアー・大会取材/日本フットサル連盟 今井千秋