スポーツ庁・ガバナンスコード検討委員会において、U-18カテゴリーの重点普及・組織課題プロジェクトメンバーの中心となっている、神奈川県フットサル連盟 理事長・武相高校フットサル部 指導者の大友 洋介氏に、自身とフットサルの関係やガバナンスコード検討委員会での取り組みについて、お伺いしました。今回は後編をお届け致します。(前編はこちら)
―ガバナンスコード検討委員会での取り組みと出てきた課題について教えてください。
重点地域として関東で取り組むにあたり、地域連盟の中にアンダーカテゴリーの専門委員会がなかったため、まずは各都県連盟から担当者を選出してほしいとお願いしました。人がいないことには始まりませんので、各都県連盟から各カテゴリーにおける担当者を設置してもらいました。
課題に関しては、関東の場合、東京都と神奈川県が14、5年の間ユース単独で活動を重ねているのに対して、山梨県、群馬県、栃木県は、全日本U-18フットサル選手権大会でも、チームが集まらずに苦労しています。人口が多く、敷地が狭い都市部ではフットサルのチームは多く存在しますが、人口が少ないが、敷地に恵まれた地域では、サッカーだけに取り組む傾向が強く、新規のアンダーカテゴリーのフットサルチームができる兆候すらもありません。サッカーをメインに取り組むチームだけではフットサルリーグを作ることは困難です。フットサル専門チームの存在が、フットサルリーグの普及において重要だと考えます。地域間の温度差は課題であり、足並みを揃えたいです。たくさんチームがあっても、施設があっても、リーグ戦が行われていない県は多いです。
―課題に対する打開策と関わる人について、教えてください。
打開策(次のステップ)としては、Fリーグ・地域リーグのチーム、フットサル施設に付随するチームに、アンダーカテゴリーを作ってもらうことが有効だと考えています。選手が集まらないことが、また課題となってしまうかもしれませんが、それに関わり協力してくれる人が揃ってきた印象です。
2002年の日韓ワールドカップの年にフットサルイベントがたくさん開催され、ここでフットサル始めた人は多いのではないかと思っています。彼らの多くは40歳を超えています。この人たちが教える側だけでなく、大会を整備していく側になると、アンダーカテゴリーの子供たちが目指せる目標(大会)の実施がもっと身近になるのではないでしょうか。
―”大会”について、話し合いを重ね、見えてきた目標や描いていることを教えてください。
3大大会の実施です。8月に全日本U18フットサル選手権大会があるので、1月と3月にリーグの頂点を決めるリーグチャンピオンズカップと各都道府県の選抜大会を開催したいです。普及の面で考えると、選抜大会の参加チームは単独のチームでも各チームから集めた選抜チームでもいいと思います。1月と3月にどちらの大会を開催するかはこれからの検討案件になっています。11月には、関東U18リーグのチャンピオン大会を企画しています。リーグ戦が終わっていないタイミングでの開催になってしまうので、前年度優勝チームを出場させるのか…という問題はこれからクリアにしていかなければいけない点ですね。
また、もし4つ目ができるとすれば国体だと思っています。まだ年代までは確定していませんが、栃木でフットサルの大会を開催するかもしれないという話は出てきています。難しいとは思いますけど、やはりできるといいなと思いますね。目標づくりをしてあげたいです。
―”大会”の重要性について考えを教えてください。
日本フットサル連盟主催のユース選抜トーナメントは過去に4回開催されました。この大会に出場した選手の多くは、現在Fリーグで若手として活躍しています。それだけ意味がある大会だったと思っています。逆に言えば、2019年以降は開催されていないので、今後の若い選手への影響は少なからずあるのではないでしょうか。
女子フットサルにも男子と同様のことがいえると思います。U-18女子、大学女子は開催されていないカテゴリーです。U-18大会が行われることで、若返りを図ることができると思います。とにかく、大会を開催し目標を設定してあげることがすべてですね。
ガバナンスコード検討委員会の中でも挙がりましたが、目標となる大会が、年1回の全日本ユース選手権大会だけではフットサルが根付くはずはないと思っています。子どもたちにとって年1回の大会だけの目標では、年間の活動カレンダーを埋めることはできません。彼らの感覚としては、4年に1回のオリンピックよりも遠いかもしれません。半年に1回でも遠いくらいで…。
サッカーで言えば、選手権、インターハイ、高円宮杯U-18リーグ戦、国体(選抜大会)などがありますよね。こういった活動目標が年の中で3回以上ないとチームとしての継続的な活動が非常に難しくなると思います。いくら指導者がいても、目標がなければ活動が始まりません。
高校生サッカーで活躍している選手が、全日本ユースフットサル選手権に1回だけ出て優勝したとしても、そこから先は深く興味も示さず終わりになってしまいます。これが年2回開催できるようになると、勝ち負けの経験を通して、喜びと悔しさから生まれるものがあるので、サッカーからフットサルを選択する選手も増えてくるんじゃないかなと。そのキッカケづくりを、私たち大人がしていきたいです。サッカーチーム、サッカー部に所属しながらフットサルの日本代表に選ばれている選手もいます。若い選手へのアプローチとなるような取り組みはとても重要です。
―ガバナンスコード検討委員会がキッカケとなり開催した大会はありますか?
2月20日(日)に開催した、関東U-18選抜大会です。とにかく大会が不足しているので…今回はプレ大会でしたが、次年度は関東大会として正式に開催できることになりました。‟関東”の冠があることで出場できるチーム数は増えてきます。グラスルーツというのは本来草の根という意味があり、その年代に対する取り組みもありました。でも、現在のU-15・U-18に必要なのはエンジョイの大会ではなく、オフィシャル大会です。そういった意味でもこの大会を実施できたことは大きな成果だと思っています。
‟関東”の冠がある大会だから山梨県選抜は出場に踏み出すことができたと聞いています。このチームには、一か月前の全国高校サッカー選手権に出場した選手が2人いました。そのうちの1人は、Jリーグからも声がかかっていたそうです。しかし、自分の状況などを考えた上でサッカーはこのタイミングでやめるつもりでいたようで、この大会がFリーガーを目指すキッカケになったと聞いています。この選抜大会を視察に来ていた、フットサル日本代表の木暮監督と高橋コーチも、こういった選手に注目していたようです。アスリートとしてのレベルが非常に高く、目に留まり、世界で戦うにはこれくらい強度のある選手にフットサルの技術を教えていきたい、そんな印象だったようです。今はこういった選手が埋もれている状態だと思いますので、魅せる場を作っていきたいし、競技レベル向上という意味でも必要だと思います。
―フットサルの未来がどうなってほしいと願いますか?
もっと観に来る人が増えるといいなと思います。コロナ禍で観る機会はかなり減ってしまったんですよね。日常の中で“フットサルを観に行こうよ!”という根付き方ができればなと。Fリーグにも平均2000人くらいの観客が常に確保できるリーグになってほしいなと思っています。お客さんが多く入ってくると、そのステージを目指す選手たちが増えるんじゃないかなと思います。そういう夢を持ってくれたら嬉しいです。育成年代でフットサルに取り組んだ選手が、Fリーガーになれなかったとしても、ファン・サポーターになって欲しいなと思います。
Fリーガーとして活躍しながらも、仕事との両立や、将来設計に苦労している人もいると思います。今はだれもが手放しで喜べる状態ではなく、理想はすべてのFリーグ選手が職業として成り立つ環境になってほしいですね。そうなることで、学校の教員としても勧められる職業となります。
―最後に、どうしても伝えたいことがあれば教えてください。
私は今回、新たに2つの大会を作りたいと欲張ってしまったのですが、そこには理由があります。
リーグチャンピオンズカップはリーグ戦を開催していない都県からの出場は認めない予定でいます。というのは、各県にフットサルリーグを創って欲しいからです。生活の一部にフットサルがあってほしいのです。フットサルが根付くという観点からそうしてほしいなと思っています。ただ、それだけでは関東8都県での協力体制が鈍ってしまいます。選抜大会は関東全都県から出場してもらい、地域として競技強化と普及のふたつをクリアできるような大会を目指します。そのため、2つ同時に立ち上げる必要がありました。ガバナンスコード検討委員会がいいキッカケになりました。フットサルが根付くところには根付いていると思います。まずは大会を整備し実施することでフットサルの普及発展に繋げていきたいです。
取材/(一財)日本フットサル連盟 今井千秋
【プロフィール】
大友 洋介(おおとも ようすけ)
現在、学校法人武相学園 武相中学高等学校 理科専任教諭として勤務
生年月日:1977年8月10日
出身地:秋田県秋田市
出身校:秋田県立秋田高等学校
横浜国立大学教育学部基礎理学課程
※本事業協力/アビームコンサルティング㈱
2022年4月20日(水)
スポーツ庁・ガバナンスコード検討委員会
委員長 原田 理人